【2023レポート】④武生国際作曲ワークショップ(9月4日)(神山奈々氏)

武生国際音楽祭2023と連動して、第22回武生国際作曲ワークショップも開催中です。その様子を、作曲家の神山奈々さんに紹介していただきました!

 第22回武生国際作曲ワークショップは、9月4日から開講されました。今年はリトアニア、エストニア、セルビア、ポーランドといったヨーロッパの周縁諸国をバックグラウンドに持つ作曲家を招き、開かれた学びの場として多くの受講生を迎えています。近年は、アジア諸国からの受講生が増えており、多様な文化的背景が一つの場所で重なり合い起こす化学反応を肌で感じることが出来ます。誰にとっても「武生」での経験が特別なものになることを切に願って、熱い一週間が始まりました。

 初日は、二人の作曲家による「自作を語る」。一人目は、日本の作曲家、坂田直樹さん。日本とフランス、両国で学ばれたご経験からそれぞれ何を得て、それらがご自身の音楽とどのように結びついているかについて丁寧にお話し下さいました。また、近作のオーケストラ作品を取り上げ、オーケストレーションの方法や、その中における楽器法の拡張についてフォーカスした内容となりました。    二人目は、セルビア出身、ドイツを現在の拠点としている作曲家のフリスティナ・スザクさん。作品のユニークな音響が一瞬で受講生の耳を啓きました。具体的な過去の作曲家の作品を例にとり、それらがご自身の創作とどのように関連しているか分かりやすくお話し下さいました。「始源の音」を彷彿とさせる作品群は、プリミティブな魅力に溢れているのだけれど、一方ではとても知的でそのアンバランスさが魅力的な方です。

 また、リコーダーの鈴木俊哉さん、尺八の田嶋直士さんによる、楽器のレクチャーもありました。二つのエアリード楽器の実演を聴きながら比べると、その共通点や違いにもたくさん気付かされました。

 二日目は、リトアニア出身のユステ・ヤヌリテさんの「自作を語る」で始まりました。美学的なものと時間の概念が結びついたフォームの美しさを作品から率直に受け取ることが出来ました。ご自身の方法論についてのお話は、音の素材をどうやって限定するか、またその楽器法と音色についてなど大変具体的でした。そして私にとっては、どうやって学生の作品を指導するかという話も興味深く聞きました。続いてポーランドのコンポーザーピアニスト、アンジェイ・カラウォフさん。私は自作のリハーサルがありこのレクチャーを聞くことが出来なかったのですが、音楽祭に参加する演奏家の友人から面白いエピソードを伺いました。カラウォフさんはこの音楽祭で日本初演となる曲を発表されますが、ピアノをご自身で弾きながら、リハーサルを進められているそうです。それはとても音楽的で直感で掴みやすいコミュニケーションによるリハーサルの時間だったと聞きました。「新しい地平コンサート」で聴けるのを楽しみにしています。

 サキソフォンの大石将紀さんよる楽器のレクチャーでは、9日に演奏されるマーク・アンドレの作品を取り上げ実演を交えながら、その場にいる受講生を含む作曲家と対話を行う形式で密な質疑応答が繰り広げられました。

アコーディオンの大田智美さんによる楽器のレクチャーでは、作曲の際に大変有用な資料を多く得ることとなりました。

明日は、ワークショップの皆さんと遠足です。この短評を書いていてまだ眠れないのですが、遠足が楽しみ過ぎて眠れないことにしようと思います。