ご挨拶

Toshio Hosokawa

武生国際音楽祭2018

「ブラームスから21世紀音楽の新しい地平へ」について

武生国際音楽祭は、他の地方の国際音楽祭とは著しく異なった視点から、プログラムを構成しています。偉大なヨーロッパの過去の音楽を、優れた演奏家を招いて演奏する、というのが日本での一般的な音楽祭ですが、武生はただ外から優れたものを招聘し、紹介するのではなく、この小さな越前という人口9万人の小都市から、音楽を創造し、それを世界に向けて発信していこうという姿勢を持ち続けて、既に20年以上やってきました。東京でも聴けるクラシック音楽を地方に持って来て、地方に紹介するというのではなく、地方でしか出来ないものを創りあげて、東京を超えた世界に向けて発信していくことが、主眼となっています。そんなことは可能なのでしょうか。そうした姿勢に、地方の聴衆は耐えられるのでしょうか。そんな問いかけを毎年持ち続け、地方にも巣食う根強い反対の意見(子供にでも分る優しい曲を演奏してほしい!)と戦いながら、ここまで続けてこれたのは、武生音楽祭の中心にいる推進会議の人たちの強い支持があったからです。それにはいくら感謝してもしきれません。私は地方を上から目線で、バカにしたくはありません。むしろ東京中心のどう考えても狂っているとしか思えない政治、文化行政を批評的に見れるのは、地方の新しい力であると思っています。

「ブラームスから21世紀音楽へ」という題目は、この武生音楽祭は、基本的にはクラシック音楽を中心の音楽祭でありながら、それに終らない新しい創造的な音楽祭であるという自負を持ってつけられたものです。もちろん若い作曲家たちが集まり、全く新しい生まれたばかりの世界初演曲をたくさん演奏します。それを演奏するのは、昨年ヴェネチア、ヴェローナ、リュブリヤナでの素晴らしい演奏で高い評価を受けた「武生アンサンブル」です。この音楽祭で生まれ、成長したこの演奏家たちは、今や世界のどこにいっても圧倒的な感動を与える素晴らしいアンサンブルに成長しました。そしてブラームスを中心として組まれたクラシック音楽の演奏は伊藤恵によって選抜された日本で最も優れた若い世代の演奏家たちと、ヨーロッパから来た著名な演奏家との恊働で生みだされます。それは定番となったクラシック音楽ではなくて、今に生みだされた新鮮で創造的な21世紀のクラシック音楽なのです。それは東京で創られ、地方に垂れ流されるように巡業で回って来る音楽ではないのす。

今年のクラシック音楽での、注目する招待演奏家、セルゲイ・ツィンマーマンはあの偉大なヴァイオリニスト、フランク・ペーター・ツィンマーマンの息子であり、すでに世界的な名声をもった若いヴァイオリニストです。韓国人のソプラノ、イレー・スーはベルリンを中心に活躍する国際的な歌手で、その声の美しさは、圧倒的な力をもっています。作曲家では、オーストリアの最も若く優れた世界的な作曲家ヨハネス・マリア・シュタウトが初来日します。彼の音楽はすでにベルリンフィル、ウィーンフィル、ウィーン国立歌劇場等でもレパートリーとして上演され続けています。このような贅沢な招待者と、毎年武生に集ってくれる日本の素晴らしい演奏家、作曲家たちが出会い、約10日間に渡って激しく交流しあいながら、何か特別な素晴らしいものが生まれていきます。

細川俊夫(武生国際音楽祭音楽監督)

 

武生国際音楽祭によせて

Kei Itoh今年も細川俊夫音楽監督のもと、コンサートプロデュースをさせて頂けること、大変嬉しく思っています。
また、演奏家、音楽祭を支えてくださる多くの皆様、スタッフ、そして何より聴衆の皆様のおかげで、
音楽祭自体が豊かに育っていることに、心から感謝しております。
最近特に嬉しいのは、是非とも武生国際音楽祭を聴いてみたい、行ってみたいと、
お声をかけてくださる多くの方々に出会うことです。
今年もその声を支えに、演奏家達は自らを奮い立たせ、真摯に厳しく音楽と向き合い、
命を削るような演奏を届けてくれると信じています。
ここに集う演奏家達は、音楽に信念を持って、理想の世界に少しでも近づこうとする精神を磨こうとしています。
その姿勢にお互いが共感し、妥協せず、形而上の純粋で美しい世界を音楽に求めています。
今年も沢山の方々と、そのような世界を分かち合えることを、楽しみにしています。

伊藤恵(コンサートプロデューサー)

 

[最終更新日 2017.7.2]