ご挨拶

Toshio Hosokawa今年の武生は『シューベルト』の音楽を中心にプログラムを組んでみました。
シューベルトの音楽は,単にウィーン楽派の美しいクラシック音楽ではなくて、その奥には恐ろしいほどの衝動的な暗さ,深さも隠し持っています。
モーツアルトともベートーヴェンとも異なった深淵の世界を、美しい旋律とハーモニーの背景に聴き取っていただきたいです。その音楽に伊藤恵さんのもとに集う日本の最も優れた若い演奏家たちが挑戦します。その演奏レヴェルは,間違いなく世界的なレヴェルのものです。
そしてそのシューベルトの音楽から約100年後の新ウィーン楽派のシェーンベルク、ベルク、ヴェーベルンの作品も特集しました。彼らの音楽 は、決してシューベルトの世界から遠いものではなく、その音楽には深い歌があり、20世紀音楽の古典としての気品と格調があります。ちょうど今日から 100年も前の音楽です。その無調の響きから溢れ出てくる音楽の官能性と危機感を味わっていただきたいです。

作曲セミナーの中心作曲家は、イタリアを代表する国際的な作曲家シュテファノ・ジェルバゾーニです。個性的で豊かな音響世界を持つ彼の様々な独自な音楽は、ヨーロッパの音楽祭で常に高い評価を得ています。パリ音楽院の教授でもある彼は、優れた教師でもあります。

日本の独自の音楽祭である武生国際音楽祭は、西洋古典音楽をただ受動的に受け止めるのではなく、いかにこの21世紀の現代日本で芸術音楽が可 能であるのかを聴衆と一緒に体験し考える創造的な広場でもあります。したがって日本の伝統音楽の音楽家や生け花のアーティスト、コンテンポラリーのダン サーたちもそこには参加し、コンサート会場だけではなく、越前市の美しいお寺や邸宅でも様々な音楽会が催されます。そこでどのような刺激的で素晴らしい出 会いが生まれるのか、今年も楽しみにしています。

細川俊夫(音楽監督)

 

武生国際音楽祭によせて

Itoh Kei今年も、素晴らしいメンバーが揃い、熱く充実した音楽が繰り広げられることを、心から楽しみにしています。
武生に来ると、自然に心が浄められ、音楽が生き生きと湧き上がってくるのは、一体何故か、毎年不思議に思います。武生は我々にとって、音楽的パワースポットに違いありません。
また、毎年武生に集まる音楽家にとっては、この1年の成長を試される修行の場でもあり、皆命懸けで、音楽だけに集中します。
その純粋な命懸けこそ、聴いて頂く聴衆の皆様に感動をお届けできる、唯一のことだと信じて、音楽家達は日々研鑽を積んでいます。

伊藤恵(コンサートプロデューサー)

 

[最終更新日 2016.6.14]