武生国際音楽祭2023の公演プログラム公開

武生国際音楽祭2023の公演プログラムが公開されています。
プレイガイドでのチケット発売は7月1日(土)を予定しております。
(インターネット上でのチケット販売は6月23日(金)開始予定)
プログラムの詳細はメインコンサートのページよりご覧下さい。

武生国際音楽祭2023プレイベント第1弾を開催します!

タイトル:五感で楽しむ鑑賞会~やってみよう 対話型鑑賞!

日時:2023年6月17日(土)11:00~12:00

会場:越前市文化センター202号室

定員:20名(入場無料)

『キリグ子ども美術館』のメンバーと一緒に、音楽を聴いて感想を語り合う「対話型鑑賞会」を開催します!同じ音楽を聴いていても、感じることは十人十色。他の人の意見を聞くことで、音楽の新しい楽しみ方を体験できます。皆様のご参加をお待ちしています!

細川俊夫音楽監督が「バークレー日本賞」を受賞されました!

カリフォルニア大学バークレー校日本研究所 プレスリリース

 2022年12月1日、カリフォルニア大学バークレー校日本研究センターは、2023年の「バークレー日本賞」の受賞者が、武生国際音楽祭の音楽監督である細川俊夫さんに決定したことを発表しました。2023年1月20日(金)17時(アメリカ太平洋時間)より、同校キャンパスにて授賞式が行われました。授賞式では、川村京子さんによる細川さんの《箏歌》の演奏も行われました。

  バークレー校日本研究センター は、長年にわたるヨーロッパと日本における細川の創作活動の軌跡を振り返りながら、それぞれの文化圏の音楽文化における彼の活動の意義を評価し、今回の受賞理由について、以下のように述べています。

細川俊夫氏は、2000年代初頭以降、世界におけるもっとも著名な作曲家の一人であり、ヨーロッパと日本の主要なオーケストラ、音楽祭、オペラ劇場等から委嘱を受け、数多くのオーケストラ作品とオペラを発表しています。細川氏は、西洋音楽と日本音楽の影響の均衡を保つ作品を発表し続けてきました。彼の音楽は、文化の多孔性という可能性を示しています。西洋のクラッシック音楽の歴史が細川氏の生涯を形作ったのと同時に、細川氏の音楽は、西洋のクラッシック音楽にきわめて大きな影響を及ぼしてきました。この点で、細川氏は、傑出した日本の作曲家であるのみならず、世界で最も優れた作曲家の一人として評価できます。

カリフォルニア大学バークレー校日本研究センター プレスリリース より

 バークレー 日本賞は、カリフォルニア大学バークレー校日本研究センターが、生涯を通して世界における日本の理解に重要な貢献を行ってきた方に贈呈する賞です。この賞は、日本研究センター設立50周年を記念して2008年に創設され、数年に一回の頻度で受賞を行っています。過去のの受賞者は、作家の村上春樹氏(2008年)、映画監督の宮崎駿氏(2009年)、音楽家の坂本龍一氏(2013年)、物理学者の梶田隆章氏(2017年)、作家の柳美里氏(2022年)です。

 2012年の紫綬褒章、2018年の国際交流基金賞、2021年のゲーテ・メダルに続く、素晴らしい賞の受賞を、武生国際音楽祭推進会議一同、心よりお慶び申し上げます!

パコ・ヤニェス氏の武生国際音楽祭評

 武生国際作曲ワークショップに講師として参加した音楽ジャーナリストのパコ・ヤニェス氏が、スペインのインターネット音楽祭メディア「Scherzo」に武生国際音楽祭2022のレポートを連載しています。スペイン語ですが、翻訳ツールなどを利用してぜひご一読ください。

9月4日オープニングコンサートについて

9月6日アルディッティ弦楽四重奏団コンサートについて

9月8日ソプラノと弦楽の調べコンサートについて

9月9日新しい地平I &細川俊夫と仲間たちコンサートについて

9月10日新しい地平II & III &弦楽四重奏の夕べコンサートについて

9月11日ファイナルコンサートについて

9月11日 音楽祭短評②(金井勇)

 16時に開演したファイナルコンサートはまず、上野由恵のフルート独奏によるドビュッシー『シランクス』で美しく神秘的に幕を開けた。ギリシャ神話の精霊シランクスが牧神パンの強引な求愛から逃れきれず、ついには葦に姿を変えてしまい…という悲しみの果てを題材にした20世紀無伴奏フルート曲の金字塔。 今年の音楽祭の中で上野は2つの初演曲(ソルビアーティ作品の日本初演及び拙作の世界初演)をバスフルート、ピッコロにも持ち替えて秀麗に送り届けたほか、ブーレーズ『ソナチネ』を北村朋幹のピアノとともに鮮烈に魅せた。その締めくくりとしての『シランクス』を、(いささか飛躍するが)二度と戻れぬ姿の象徴と準え、延いては今日このコンサートが二度と帰ってこない「一期一会」の瞬間として受取り、そのような心持で沁み入りながら聴き入った。

 次いでアルディッティ弦楽四重奏団によるクセナキス『テトラス』。古代ギリシャ語で「4」を意味するという『テトラス』では4人の奏者が一つの本体として扱われる。特殊な演奏法で生み出されるノイズが終始鳴り響き、音塊が強烈に揺れ動く。クセナキスは2022年が生誕100年にあたり、それを祝いこの音楽祭でもいくつかの作品が上演された。アルディッティ弦楽四重奏団を特集した9月6日のメインコンサートでは『ST/4』が取り上げられ、緊張漲る演奏で聴衆を感嘆させた。オープニングコンサートに始まり、メインコンサートでの特集、2曲の新作(ガルデッラ、中堀海都)の世界初演、クセナキス『アケア』についての公開リハーサル、またウェーベルンやバルトークを演奏する若い弦楽四重奏団の本番前リハーサルへの立ち会いも行い、連日にわたって精力的に活動する姿は大変印象的であった。

 武生国際音楽祭は3つの柱が共存する稀有な音楽祭ではなかろうか。ピアニスト・伊藤恵がプロデューサーとして率いる西洋クラシック音楽の柱。作曲家・細川俊夫が監督する作曲ワークショップが発信する現代の音楽の柱。そして地元・武生の音楽愛好家が参加する合唱団の柱。プログラムの後半は、この「合唱の柱」が主体となるファイナルコンサート恒例のステージである。そしてこの日のために組織されたその「武生国際音楽祭フェスティバル合唱団」を愛情もって牽引した鈴木優人がJ.S.バッハとヴィヴァルディを、満を持して披露した。

ここに、メインコンサートの弦楽奏者の顔ぶれを中心に、コントラバス、オーボエ、トランペットとチェンバロが編入された武生アンサンブルが共演。  受胎告知を受けた聖母マリアが神を賛美する、ヴィヴァルディ『マニフィカト』では合唱を中心に、ソリストの重唱が織り交ざる。第6曲「飢えた者を満たし」での美しい女声二重唱が印象的であった。

 続くJ.S.バッハ『オーボエとヴァイオリンのための協奏曲』では白井圭のヴァイオリンと荒木奏美のオーボエの対話を最小の編成のアンサンブルが包む。鈴木がチェンバロ奏者としてリードし、四戸香那のコントラバスが深い音でもって音楽に立体感を加えた。

 最後はバッハのカンタータ『心と口と行いと生活で』。受胎告知に続く場面でやがてイエスとへの愛と賛美が溢れゆく。10曲の小品が2部構成でまとめられているが、1~6曲目が第1部、7~10曲目が第2部となる。オープニングとなる第1曲は合唱にトランペット(滝村洋子)加わり高らかに始まり、各独唱を経て、再び合唱。このコラールは『主よ人の望みの喜びよ』の曲名でよく知られている。第2部もテノールから始まる各独唱を経て、最後に再び『主よ~』のコラールが登場し、音楽は静けさの中へと収斂する。

 武生国際音楽祭2022はこの曲の演奏の深い感動と興奮の余韻を残し成功裏に閉幕した。

評者:金井勇(第21回武生国際作曲ワークショップ アシスタント作曲家)
東京音楽大学作曲専攻卒業、同大学院修了。2012年、2015年及び2016年武生国際作曲ワークショップ招待作曲家。「新しい地平」における近作としては『from Being』(スロウィンド木管五重奏団)、『to Becoming』(赤坂智子と大田智美)、『邯鄲の夢』(マルコ・デル・グレコ)等がある。また2019年は鈴木優人補筆校訂版のモーツァルト作曲『レクイエム』の武生版オーケストレーションを行った。