本年度の武生国際作曲ワークショップのアシスタントの作曲家・神山奈々さんに武生国際音楽祭のレポートを頂きましたので、掲載いたします。
第25回武生国際作曲ワークショップは、2日目を迎えました。最初のレクチャーは、イタリアの作曲家フランチェスコ・フィリデイ。近年は、オペラ作曲家としても広く知られています。レクチャーは、誰にとっても避けることのできない「死」という問題について、「自分は音楽でなら考えることができる」という言葉から始まりました。1995年に作曲された《Toccata》では、「トッカータ」という伝統的な音楽様式を取り上げながら、その語源にある「触れる」という意味を問い直すように、ピアノの弦に直接触れることなく演奏される作品を紹介しました。そこには、言葉や概念に対する深い洞察と、イタリアの音楽文化に根付く伝統への深い理解が重なって感じられました。さらに《Danza Macabra》《Antinoo》《I Funerali dell’Anarchico Serantini》《Esercizio di Pazzia II》など、さまざまな作品を取り上げながら、作曲の背景や音楽的な考え方についてお話しされました。特に印象的だったのは、一つのスケールと色彩を聴くための《Prelidio》、そして半音階が上昇していくというシンプルなアイディアから構成された《Five Organ》です。その後、《Giordano Bruno》を通して、オペラのフォームと中心音との関係についても知ることができました。「音楽は、聴けるものだけではなく、“聴くことを助けるために機能するもの”でもある」という考え方が、フィリデイの新しいサウンドにつながっていることが、とても興味深く感じられました。また、話題となっていたオペラ《薔薇の名前》についても、実際の映像を鑑賞しながら、作曲家自身の視点から作品について知ることができ、貴重な経験となりました。
続くレクチャーは、エレクトロニクスの有馬純寿。テーマは「エレクトロニクスを伴う作品の作曲手法について」でした。現在、ライブエレクトロニクスを用いた作品は一般化し、日本でもその上演機会が増えています。今回は入門編として、まずエレクトロニクスを用いた作品のさまざまな分類について学びました。さらに、生楽器とのシンクロナイズの方法や、具体的な作曲の進め方についても、演奏家と技術者、双方の視点から詳しくお話しいただきました。豊富な実践経験に基づく考察には大きな説得力がありました。その上で、「まずは自由に作品の構想を考えてみること」「DAWなどを使って実際の音を聴いてみてから考えること」など、具体的な作曲へのアプローチも提案されました。作曲家、演奏家、そして技術者。それぞれの視点から音楽を捉え直すことで、エレクトロニクスを用いた作曲の可能性について考える、充実したレクチャーとなりました。
