【武生国際音楽祭2026レポート⑩】

本年度の武生国際作曲ワークショップのアシスタントの作曲家・神山奈々さんに武生国際音楽祭のレポートを頂きましたので、掲載いたします。

9月4日(金)メインコンサートは、「細川俊夫と仲間たち」。前半は、フリスティナ・スザクの作品「富士の風」から始まりました。鈴木俊哉のリコーダー、田嶋直士の尺八のデュオには有馬純寿のエレクトロニクスが効果的に入り拡張された微細な音響を聴くことが出来ました。続く坂田直樹の作品、「風から息を盗む」はフルートのマリオ・カーロリのヴィルトゥオジティを生かした書法が際立ちます。スリリングな楽想の中に弱奏の音色の素晴らしさを楽しむことが出来ました。馬場法子の「Bestiarium Musicale IV」は、鳥にまつわる3つの小品。マリオ・カーロリとチェロの上村文乃による演奏で洗練された遊び心を感じました。フランチェスコ・フィリデイの「すべての身振りが終わったとき」では、普段聴くことのないような音が各奏者の楽器や、楽器以外に用意された発音装置から聴かれます。フルートの上野由恵、クラリネットの上田希、ホルンの西川優弥、打楽器の葛西友子、ヴァイオリンの辺見康孝、チェロの柴田花音、指揮は大井駿による演奏でした。サウンドは斬新ですが重厚な内容を持つ魅力的な作品はやがて古典になってゆくことでしょう。

後半は、細川俊夫の歌曲とピアノ四重奏。「3つの天使の歌」ではソプラノは天使として、またはシャーマンとしての役割を担います。ソプラノのイルゼ・エーレンスとハープの吉野直子による演奏は日本的な時間の流れを感じさせる非常に美しいものでした。ピアノ四重奏のための「レテ(忘却)の水」は、ヴァイオリンの毛利文香、ビオラの山本周、チェロの上村、ピアノの伊藤恵による演奏。始まりも終わりもない静かな音の河を遠くから見つめているような聴覚体験。豊かな響きが会場を包み込みました。